日本の妊婦さんにもっと知ってほしい事実1:妊娠初期の胎児超音波検査について

GW真っ只中、2年連続でステイホームの毎日です。

 仕事がらみでやらねばならないことはいっぱいあるのですが、連休まで仕事がらみのことはあまりやる気が起こらない。でもせっかくステイホームなんだから、時間を有効に使いたい。。。。常に仕事のことが頭を離れないのが悩みの種です。その上にコロナ禍、気を抜いてのんびり出来る日は来るのでしょうか。

 と、言いつつ、また仕事のことを思い出してブログ執筆。困った性分です。

 さてと、では連休前に頭に浮かんでいたことを文章にしておこう。

胎児の検査・診断に関連する医療の日本における現状

 厚生労働省の方々も、コロナ対策で本当に忙しい日々を送っておられることと思いますが、そんな最中でも出生前診断の問題にも取り組んでいただけていることは、本当にありがたいことと思います。一日も早く、私たちの手に、今可能な出生前検査・診断の一通りをきちんと扱うことのできる立場を与えてほしい。日々情報収集して、知識をブラッシュアップしつつ、迷える妊婦やその家族と向き合っている私たちが、扱うことのできる検査を制限されている状況を、改善してもらいたいのです。

 出生前検査が極端に制限されていることは、単に私たちが苦しんでいるだけではなく、以下のような弊害にもつながっています。

1. 一般的な妊婦診療を行なっている産婦人科医の多くが、検査そのものについてきちんと理解していない。

 やっぱり、実際に自分が扱う段になってはじめて、どういうものなのか、どのようにするべきか、勉強するんです。他の検査にしたって薬にしたって同じです。自分が扱えないものについて、しっかり知識を得ておこうという余裕のある人は少ないのです。他にも新たに学ばなければならないことはたくさんあるからです。例えば私は、産婦人科医ではあるけれどもう10年以上婦人科の患者さんの診療は行っていません。子宮の癌や卵巣癌の治療戦略がどのように変わってきているかなど、全く勉強していません。

2. 普通に妊婦健診を受けていると、海外では当たり前に行われている検査について、全く情報のないまま妊娠は経過していく。

 実際に妊婦健診を行なっているお医者さんが1. の状況なのです。妊婦さんは、自分から調べている人でない限り、妊婦健診の場などでは情報が伝わる機会がありません。

 だから、以下のようなことが起こります。

・なんでお産が近い時期になってから、もっと早くからわかりそうな胎児の異常が見つかるの?というケースが結構ある。産まれる前に診断して準備するには時間的余裕も心の余裕もない。

・え、その説明違ってますよね。うちに相談に来られなかったら、この人どうなってたの?と思うようなケースもある。

・海外出身で親族が海外にいる方や、前回のお産の時は海外で健診を受けていたというような方が、「なぜ日本ではこの検査が普通に受けられないの?どこへ行けば受けられるの?」とおっしゃることがよくある。

 超音波診断装置を用いた胎児の観察も、停滞している印象があります。

妊娠初期の胎児超音波検査は日本では全く普及していない

 当院に来院された妊婦さんやご家族の言動から、もっとここはわかってもらいたいなと思うことがいくつかあります。それらの中で、最近よく考えるのは、超音波で何をどのくらい見ているのかについて、知ってほしいということです。

 たとえば、妊娠初期の検査を受ける際に、どうしてもコンバインド検査というと、超音波といえばNTを測るものという認識のされ方をしている気がするし、当院で「コンバインド・プラス」と言っても、せいぜい複数項目超音波マーカーを追加するものという認識になるようで、胎児のさまざまな部分についての観察を行う印象がないのかもしれません。

 検査前に、検査を動画で持ち帰って保管する(現在当院では、USBメモリに保管した動画ファイルをUSBメモリごと買取という形になります)希望を伺っても、まだ大して見えないだろうし見てもわからないだろうと考えて、「今はまだいいです。」と言われ、検査の中盤や終わりごろになって、「やっぱり動画いただけますか?」と言われることも度々あります。

 「こんなに見えるんですね。」とよく言われます。

 通常の妊婦健診で、この時期にこういう見方をする機会がありませんので、知らなくてあたりまえなのかなとも思いますが、見る価値がありますよ!ともっとみんなに知ってほしい。

 だいたいこの初期超音波検査の前までは、お腹から診断装置をあてて観察するということがまずありません。通常は、経腟超音波検査での観察となりますので、当院での初期超音波検査の時に「お腹から見るのは初めてです。」とおっしゃる方が多いですし、経腟検査だと思って準備しようとする方も時々おられます。経腟超音波でも、画面で説明しながら見せてくれる医師は増えてきているとは思いますが、落ち着いて見ていられないし、そう長時間やっていられる検査ではありません。また、11週よりも前の段階では、それほど細かい観察もできません。

 それでいて、10週あたりで胎児の生存が確認されて予定日が決まったら、次の健診は4週後と言われてしまうし、多くのお医者さんは14週あたりではまだ胎児の詳しい観察をしたり胎児の問題を診断したりする時期ではないと考えていますので、妊婦健診ではもう本当にサラッとしか見ません。胎児をちゃんと見ようというつもりで超音波を行うのは、20週ごろまでなかったりします(中には、妊娠期間を通して、そもそも胎児の詳細を観察しようという機会さえほぼないような施設もあります)。

 以前、妊娠12週で胎児の問題を見つけ、そのことについて妊婦さんに説明したのちに、この妊婦さんがかかりつけ医療機関で妊婦健診をお受けになるときにそのことについて主治医に話したところ、「この時期にそんなことわかるわけがない!」と強い調子で言われたということがありました。まるで私たちのことを、とんでもない胡散臭い医者だとでも言わんばかりの調子だったそうです。こういう例は極端ではありますが、その程度の認識の医師も実際に存在します。

 では、当院では現在、そのような観察を行なっているのか、なかなか言葉では伝わりにくいだろうと思い、動画で公開することにしました。

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 ぜひこれを参考にしていただき、この検査なら私も受けてみたいと思われる場合には、ご予約いただけると嬉しいと思います。

実はこの時期を書き始めたときには、いくつかのあまり知られていなそうな事実について列挙しようと考えていたのですが、妊娠初期の超音波の話だけでけっこうなボリュームになってしまったので、今回はここまでとします。書きかけでしばらく置いていたところ、あとは何を書こうとしていたかも曖昧になってしまいましたので、また思いついたら、別記事として書き足していこうと思います。