いま一度再掲します。『NIPTのよりよいあり方に関する提言』

前記事で予告しましたが、厚生労働省の第5回NIPT等の出生前検査に関する専門委員会で、いろいろな立場の委員の方々が資料を提出され発表される中、柘植あづみ委員のご発表がたいへん重要な内容であると感じられました。ここで示された提言は、以前にブログで取り上げたものをなぞるものではありますが、ここで再掲しておきたいと思います。

 この提言について、以前に取り上げた記事は以下

「NIPTのよりよいあり方に関する提言」が関係各所に送付されました。 – FMC東京 院長室

 提言そのものは以下

「NIPTのよりよいあり方に関する提言」を関係する行政機関および学会等に送付しました

ですが、その要点をここにも記しておきたいと思います。

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ここに書かれていることが全てと言っても過言ではないほど、素晴らしい内容です。

各項目の詳しい解説は、上に貼ったリンクの中にありますが、参考までにここでは第6項目として挙げられている、「検査を取り巻く社会的問題は妊婦とパートナーに負わせず、、、」の部分の解説の一部を引用します。

検査を提供する側ではなく、検査を受ける側の行動が評価の対象になっています。検査は選択肢として提示されているにもかかわらず、受けるかどうか検討したり、産まない選択をした妊婦とパートナーが、道義的責任を負わされるのは理不尽です。

社会的に未解決の問題は、その責任を個人に負わせるのではなく、社会として解決に取り組まなければなりません。障害のある人への偏見・差別の解消と支援の拡充は、この社会の基盤づくりとして、国・行政・民間団体の力を合わせ継続的に実施すべきです。

 私たちが診療を続ける中で出会う妊婦とそのパートナーから、当院にたどり着くまでに経験したいろいろなお話を伺うと、まさにここに書かれているような理不尽なプレッシャーにさらされている現状が多いことに気づきます。私たちの取り組みが、この現状を変える力の一部になれることを常に考えて診療を続けていきたいと思います。

 

 この提言をたたき台に、これまで開催されてきた4回の専門委員会を経ての考察ととりあえずの結論を示されました。お話を伺って考えたことなどを記しておきます。

・「正しい」情報提供とはいかなるものか。

話し合われてきた、妊婦が「適切な行動」をするような「正しい」情報提供のあり方といったものについての考察なのですが、これは本当に難しいですね。適切なのか否か、正しいのかそうでないのか、という判断は誰ができるのでしょう、基準はどこにあるのでしょうか。ご発表の中では、

医療の場所以外での情報提供の拡充

医療の外でも相談できる体制の構築

の必要性が述べられていました。少なくとも、ある一つの立場から見た正しさに支配されたり、指導的立場から支持されたりすることなく、幅広い意見をフラットに聞いて判断できることが大事だということなのだと思います。

・施設認定のあり方

施設認定には一機関ですべてを完結できるのを目指すのではなく、十分に連携できることが確認できたネットワークの認定も可能にしたらどうか。

「とりあえずの結論」として示された中に、上記文言がありました。これこそ大事なことだと思います。完全に同意します。次の記事でも取り上げたいと思います。