NIPT 海外ではどうなっているのか -2

NIPTの海外事情、今回はイギリスの状況報告です。

以下の記事は、現在LondonにあるFetal Medicine Foundationの総本山・King’s Collage Hospitalで、Prof. Nicolaidesの元、修行を積んでいる、林 伸彦医師からいただいた情報を元にまとめています。林医師は、NPO法人 親子の未来を支える会の代表も務めておられます。

www.fab-support.org

さて、本題に入ります。

英国では、基本的に出生前検査を含む多くの検査は、NHS (National Health Service) が扱っています。全ての妊婦が出生前検査の対象になります。

www.nhs.uk英国内どこでも、無料で検査を受けることができます。対象となるのは、妊娠初期のコンバインド検査で中間的なリスク値になった方です(高確率になった方は、絨毛検査や羊水検査の対象となる)。検査項目は3種のトリソミー(21, 18, 13トリソミー)に限定されています。

前提となるのは、全ての妊婦さんが、無料でコンバインド検査(NT計測と血清マーカー検査の組み合わせ)を受けられることです。全国で均一化を図るために、超音波検査はNT計測のみとなっています。NT計測については、どの施設でも正確な計測が行なわれるよう教育・普及が徹底されています。

また、このサービスの他に、希望すればプライベート・クリニックで検査を受けることも可能です。こちらは有料になりますが、超音波検査はより精密・詳細な内容になります(当院で行なっている検査に近いものです)。そして、NIPTで検査する項目も希望に応じて追加可能です。

プライベート・クリニックでの検査は、精密な超音波の検査とNIPTを組み合わせた価格で、400〜900ポンド(約60,000〜130,000円)です。

 

英国の大きな特徴は、なんといってもこれから生まれてくる赤ちゃんについて、全国どこでも平等に均一な検査を受けられる仕組みをつくって、国の方針として維持し続けていることでしょう。国としてどういう次世代にしたいのかが明確です。このあたりが我が国の状況との大きな違いではないでしょうか。

国全体でこのような検査を推進する施策を行うことについては、必ずといって良いほど、「命の選別だ」「障害児をいらないことして扱うのか」という否定的意見が湧き上がるわけですが、この検査を受けることについては、強制していませんし、ましてやその結果妊娠中絶を行うことを強制している訳でもありません。そして実際に生まれてくる/生きて生活している、障害を持ったこどもや大人に対しては、手厚い福祉施策をおこない、また教育環境を充実させることで対処しようとしています。

実際に生まれてきて、日々生活している人を尊重することと、今妊娠している人の心配や不安に対応し、意思を尊重すること。そのどちらも大事なことで、それぞれに手厚くすることが、未来に向けて必要なことなのではないかといことを感じさせられました。

NHSのホームページのタイトルが、NHS Choicesとなっていることが、象徴的であると感じます。全ての国民が、自分の意思に基づいてchoice(選択)できる世の中であってほしいと考えています。