無認定で新型出生前診断=医師3人を懲戒処分―産婦人科学会

別の記事を書きかけていたのですが、以下のニュースが入ってきました。このことについて一言述べておかなければならないでしょうね。

無認定で新型出生前診断=医師3人を懲戒処分―産婦人科学会 (時事通信) – Yahoo!ニュース

 

> 新型出生前診断臨床試験として認められているが、安易な中絶につながる恐れもあり、産科婦人科学会は指針で、十分なカウンセリングを行えると日本医学会に認定された施設に限定している。現在77施設で行われており、妊婦の年齢条件もある。

この種の話題が記事になる時に、必ず出てくる表現の一つが、“安易な中絶”という言葉です。しかしながら、我が国において人工妊娠中絶は、法律に基づいて母体保護法指定医のみが扱うことができるものであることは、最近出ている別のニュース(これについては、よくわからないことだらけなので、ここではとりあげていません)でも明らかなことであって、本来“安易に”行うことができる仕組みにはなっていません。また、妊娠中絶を選択する際には様々な葛藤があり、これを乗り越えて手術をうけ、その後も中絶歴という重い過去を背負って生きていくことになるものですし、社会的に中絶手術は罪悪感を持ちつつこっそりおこなわれるものという風潮が根強い中、“安易に”受ける人が本当に増加するとお考えなのでしょうか。私にはむしろ、報道する側が、“安易な言葉遣い”をしているように感じられます。

 

> 学会によると、3人とも指針に違反したことを認めており、うち2人は今後は指針を守ると誓約したため、最も軽い厳重注意処分にとどめた。残り1人は誓約しないため、1段階重いけん責処分とした。

 

3人とも指針に反していることはわかっていて始めた確信犯であったわけですが、そのうち2人は腰が引けているというか、何か信念があって始めたわけではなさそうです。残る1人の方がどのようなお考えを持って踏ん張っておられるのかはわかりませんが、大きな問題になることはわかっていたわけですから、きちんとした主張ができるようにして建設的な議論につながるようではないままに、勢いで始めてしまったようなところが非常に残念です。これでは、本来すすめられるべき前向きな議論の障害になるばかりではないかと感じます。

この指針は、日本産科婦人科学会倫理委員会が示したものですが、これにつづいて、日本医師会、日本医学会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会および日本人類遺伝学会が、関係者は日本産科婦人科学会による同指針を遵守すべきであるという共同声明を発表し、実施する施設の認定・登録を日本医学会臨床部会運営委員会「遺伝子・健康・社会」検討委員会の下に設置する「母体血を用いた出生前遺伝学的検査」施設認定・登録部会で行うこととしています。これを受けて、厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課から 「『母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査』の指針等について(周知依頼)」(雇児母発0313第1 号)3)が発出されています。この指針に違反した施設に対しての、今回の懲戒処分が重いのか、軽いのか、私にはよくわかりませんが、今回おこったこの問題がこれで幕引きになるのか、新たな展開があるのか、注視していきたいと思います。